己を知り学生を知らば百答危うからず(その4) -補足-

 先日、「己を知り学生を知らば百答危うからず(その4)」の最初の質疑応答「レーウェンフックの顕微鏡」について、オランダの菌類研究・保存機関で研究された三重大学の中島千晴先生から興味深いコメントが寄せられましたので、紹介させて頂きます。

 私がオランダにいたとき、デルフトにある博物館に行きました。そこは医学、生物学、科学の博物館なのですが、そのファン・レーベンフックのコーナーには顕微鏡の本物などがあり、レプリカも買ってきました。
 博物館の解説や実物によると、針の先に水玉というのは出来ないように思います。 針の先端は柄付き針の先のようになっていて、おそらく、コルクなどに(試料の入った容器を)貼り付けてそれを刺していたように思います。観察方法も真っ直ぐ見ることはまず不可能で、明るい方を向き傾けて、これを保持した上で、サンプルはかなり近づけて(単レンズなので焦点距離が短く1~2 mm位、さらに肉眼レンズが2.5 cm)観察することになります。その条件で水滴を見ることは不可能に思います。私のレプリカは80~120倍の観察が可能なのですが、既にビー玉を覗いている感じで、中心部のある一定の範囲しか見えませんし、その周りは収差が大きくなります。図1の右から覗く感じです。また、彼は水の中の生物やウサギの精子を観察していますが、図2の様に試験管をはめ込んだ観察装置も作っていて、左上の穴に顕微鏡を装着して観察していたようです。

図1.レーウェンフックの顕微鏡(中島千晴氏 写真提供)

図2.ガラス試験管(白矢印)のはめ込まれた顕微鏡観察用の補助器具(中島千晴氏 写真提供).赤矢印の穴から顕微鏡観察したと考えられる(中島千晴氏 談).

 やはり、実物を見たり使ったりした人にはかないません。言い訳になりますが、実はこの質問を招いてしまった事情があります。赤城かん子・正道(2017)を購入したところ、4ページに図3の原画が載っていたので、これを大学の講義スライドに利用していました。てっきり針の先に試料を含んだ水滴を直接乗せたと信じ込んでしまったのです。学生にもそのように説明したと記憶しています。この本の著者は実際にレプリカを使ってみたのでしょうか?

図3.レーウェンフックの顕微鏡のイラスト.
赤城かん子・正道(2017)の4ページ掲載のイラストを,図1に基づいて改変した.

文献

赤城かん子・正道(著),新井和人(絵),造事務所(編)2017. 微生物の図鑑 ミクロの世界の住人たち.新樹社,東京,95p.