今回は、7月上旬に登場した菌類図鑑トランプ「菌ジャカ(菌形推ジャックカード)」に寄せられた推しのメッセージ(口コミ)を紹介します。以下、「○○氏:」の段落に続く「⇒」の段落は筆者の独り言です。なお、ここに掲載させて頂いた文章は、メールでお送り頂いたものの中から特に印象的なコメントを選ばせて頂き、ご本人に公表の承諾を頂きました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
NO氏:貴重なものを、どうもありがとうございます。楽しく拝見いたしました。お恥ずかしながら、形態だけでは属名が推測できない菌もありました。勉強不足ですし、まだまだ経験が足りません。近年新規採用職員が多く、菌の専門知識をもたない若手に病害診断を教える際、私の拙い絵で菌を説明していました。今後、そのような機会がまた訪れた際には、菌ジャカを使わせていただきます。その機会が待ち遠しいです。
⇒ 第一弾はジョーカーも含めて15属です。代表的な植物病原菌は50属以上ありますので、続編制作頑張ります!
AM氏:興奮が止まらず、所内の職員に見せびらかしてしまいました。すごく勉強になるトランプですね。私も見ていて飽きないくらい楽しいです。
⇒ 鼻血出ないように気を付けて下さい。どんどん見せびらかしてください! オタク視されること間違いなし!
TK氏:菌類教育・啓発用トランプだそうですが、こうしたミクロの世界にフォーカスして生態を究明し、その写生図を残すなどという地道な活動は、かの牧野富太郎博士の活動などを思い出させ、苦労がしのばれます(ちょっと大げさか・・・)。いずれにせよ、こうした生物と一部遺伝子を我々も共有していることを思えば、別次元の感慨もあり。また、こうした分野への造詣深い人間がいてくれることが科学の進歩を下支えていますよね。「一隅を照らす」とはこうした分野にも言い得ることなのだなぁと、頭が下がる思いがします。ハウス野菜の病気で苦労している息子の家の孫にそれとなく見せて、こんど遊んでみます(笑)。
⇒ 農業に転進されたお子さんの親御さんのコメントです。お子さんがこれを機にヘソディムを導入して頂けると嬉しいですし、お孫さんがカビに興味を示して頂けたら最高です。「一隅を照らす」は中学校の修学旅行で比叡山延暦寺の偉いお坊さんから私も伺ったお言葉です。同級生の上記発言者も同じ所で聴いたのでしょうか。「中坊たちよOnly oneになれ!」というありがたい教えだったことを思い出しました。
KT氏:自宅で子どもたちと菌形推ジャックをしました。「これ、ぜんぶ、ばいきん?」という質問に対しては、制作者のことを思うと答えに戸惑いましたが、全部、植物病原菌だしな・・・と否定できませんでした。「あるぶご!」「りぞーぷす!」と学名を叫びつつ、最後までやりきった結果、私が勝ってしまい、「大人げない」と小5に叱られました。遊び方の説明以外にも各属の簡単な紹介文があると、子どもにも受けるかもしれませんね。
ゼミのあと、研究室の学生に菌ジャカを披露しました。学生たちはさすがに知識があるので、同属での絵柄の違いにすぐ気づき、面白そうに比較していました(図1)。「ジョーカーがめっちゃかっこいい(B3、女子)。」カタカナ書きに加えて、英語の一般名もあれば、もしかして世界的に売れないでしょうか? 「表面が上下非対称なので、ババ抜きの際には注意が必要(B3、女子)。」「アルブゴってなんですか(B4、男子)。」「胞子のう胞子が難しい(D2、男子)。」「この胞子の縦溝は溝ではなくて畝らしい(KT)。」など、いろいろと盛り上がり、今度景品でも用意するから、飲み会のときに遊んでみようということになりました。
⇒ 植物病原菌はバイキンではありません(笑)。植物のお友達です。中にはいじめっ子もいますが、野山では植物と協力して生態系を維持しているんだよ。やっぱり小学生には難しいか…。
「大人げない」と小5に叱られ…。しかし、負けたら親の威厳どころか、学者としての権威まで地に落ちかねませんから、苦渋の勝利だったことでしょう。
「各属の簡単な紹介文があると、子どもにも受けるかもしれませんね。」今、小中高生のために、菌ジャカの各札をトレーディングカードバインダーに収納し説明を添えた「図鑑」を作っています。冊子化することにより図書館や学校の蔵書としても利用して頂けるからです(←對馬理事長の受け売り)。
「英語の一般名もあれば、もしかして世界的に売れないでしょうか?」 英語の一般名のない植物病原菌の方が圧倒的に多く、海外では学名の方が通用していると思います。ちなみに、台湾の留学生が出身大学の先生や友達に贈ったところ、大変喜ばれたと言っていました。

図1.菌ジャカに萌える弘前大学植物病原菌学ゼミの学生・院生さん.
SY氏:これは、非常に良いトランプですね! 令和7年度の朝のなかで一番テンションがあがっています。思わず同僚の皆さん方に自慢してしまいました。今年度も、職員向けの診断の研修などが数回あるので、そこでお披露目しようと思います。出会う頻度の高い基本の属が学べるというのが良いですね。ジョーカーがさび病菌なのも良いです。第二弾があれば、Stemphylium ⇔ Alternaria(済)とか、べと病菌 ⇔ Botrytisとか玄人向けの見分けが難しいやつもあると楽しいような気がします。顕微鏡の横に常備したい一品です。
⇒ 「顕微鏡の横に常備」とは、さすがプロのコメントです。1セット最多15属ですから、よく出会う60属だけでも常備したら、4セット216札! 顕微鏡観察用のサンプルを並べるどころかプレパラートを作るスペースもありません。また、カードのサイズは約9 cm×6 cmなので、全て壁に貼ったら、縦135 cm(14枚)×横96 cm(16枚)の広さになります。第二弾にStemphyliumとBotrytisが、また、第三弾にべと病菌(Peronospora)が入る予定です。周りの方々に自慢だけじゃなくて、購入を勧めて下さいね(笑)。
MM氏:先ほどすべて並べて眺めましたが素晴らしいです。仕事せず眺めそうだったので、一度片付けましたが、また週末に堪能させていただきます。
⇒ お仕事に支障が出そうになり、申し訳ありません! 週末だけでなく、職員旅行のお供にどうぞ(あ、仕事を思い出してしまいレクリエーションになりませんね)。
LM氏:世にも珍しいカードゲーム、お送りいただきどうもありがとうございます。菌形推ジャックなるネーミングに豊三さんらしいユーモアを感じて笑ってしまいました。また、1枚1枚のカードの図からは、作者の菌類に対する愛情が伝わってきます。
⇒ 専門外の方のコメントですが、ネーミングが受けたところは、さすがに文学的造詣が深いです。また、図から私の菌愛を感じるなんて美的感覚も鋭いです。
Dr. UD:I just received your “Kinjaca”. Wow, this is really cool! Thank you so much! Next week I go to the seaside. I will play this with my friends there 🙂
⇒ 夏休み前に届いてよかったです。このコメントを頂いたのはドイツの博物館の菌類責任者の方です。cool!(カッコイイ!)って言われると、こちらもテンション上がります!かの国でも流行ると良いのですが。今度遊んだ感想を訊いてみようと思います。
MI氏:拝見させていただきましたが、どのカードにもわかりやすく親しみやすいイラストが添えられていて、楽しみながら学べる素敵なツールだと感じております。さっそく、周囲の学生たちとも一緒に遊びながら使わせていただこうと思っております。私自身も微生物の名前や特徴を覚えるきっかけにもなりそうです。
⇒ 微生物除草剤の研究を始めた方のコメントです。境界領域を研究する方々に植物病原菌を紹介するツールとしても役立ちそうです。
AH氏:本日お送りいただいたトランプを開封しました。ありがとうございました。Jokerのみ電顕写真でその他はすべて一粒一粒の胞子も手書きなのですね! Phytophthoraの遊走子のうがとても立体感があって好きです。研究員さんや学生さんたちと神経衰弱や7並べで遊んでみて、形態を見比べながら盛り上がりました。今後も研究室で遊ぶときに使わせていただきたいと思います。第二弾も楽しみにしております!
⇒ 手描きにせざるを得なかったとはいえ、描いた甲斐がありました。7並べは属内の形態変異や有性・無性世代の形を把握するにはもってこいのゲームです。
TS氏:職場の人材育成、ことさら病害虫の同定技術の習得は普遍的に重要な技術であり、そのための新人研修やその後のフォローアップには毎年かなりの時間が割かれております。効果的な研修の在り方等について日々頭を悩ませているところです。独創性のあるツール(トランプ)は初学者にとっての壁になる菌の属名を覚えることに対して助けになると感じました。
植物にも植物画がありますが、微生物で線画という美術的要素のあるのは菌類のみで(バクテリア、ウイルス類等には見当たらない)、そのための画才をお持ちで、(あえて論文と言わず)作品の脇にご自身の独自のサインを入れられるなんて、PCRの時代だけになんて素敵な手技だろうと思う次第です。
⇒ メッセージを頂いた方のお堅い職場にもかかわらず、お遊びツール製作の目的を正当に評価して頂き大変ありがたいことです。今でも絵を見るのが好きで、子供の頃はいたずら描きばかりしていました。なので、出来上がりの良し悪しはともかく、カビの絵を描くことは楽しく没頭できました。それを「画才」と評して頂けるとは恐縮するばかりです。サインを入れたのも一応真似されないようにと思ってのことです。
HH氏:菌の学名や日本語読みが記載されている資料が減っているのか、そもそも植物病理に興味がないのか分かりませんが、菌の学名を読めない人がいますので、普及職員対象の病害研修の際に使ってみたいと考えています。
⇒ 何でも名前は大事ですね。それぞれの世界の入り口ですから。何なら、菌のニックネームを付けても良いと思います。Alternaria→アルタン、Phytophthora→ファイラー、Colletotorichum→コレトムなど、友達になったようでもっと親しみやすくなるでしょう。
ST氏:早速、開封して中身を確認し、改めて貴重かつ遊び心のある出来栄えに感激しております。とても素晴らしいお仕事に大変感銘を受けております。第二弾も心待ちにしております。来年度、3年次が受講する植物病理学実験の初回ガイダンスの際、カビについてさらに興味を持ってもらうために「菌ジャカ」を利用させて頂きたいと考えております。
⇒ 早速教育に利用して頂けるのは願ったりかなったりです。初心者が実際の菌を見る前に明確なイメージを持つには、お堅い図鑑や写真よりとっつきやすいかもしれません。学生さんが実物に興味を持ってくれると嬉しいです。
TM氏:厚沢部町でブロッコリー黒すす病の講習会の講師として招かれ、顕微鏡の使い方や病害の診断方法について普及員さんに指導させて頂きました。その際菌ジャカを紹介しましたら、興味を示して頂きました(図2)。
⇒ 早速現場担当の方々にご紹介頂きありがとうございます! ブロッコリー黒すす病菌はAlternaria属菌なので、ささやかながらお役に立てたようで作った甲斐がありました。

図2.右・左:北海道厚沢部町の講習会で菌ジャカの拡大図に見入る農業改良普及員の方々.
YI氏:とても面白く、一般公開などで活用させていただきます。キノコのトランプは色々と拝見したことがありますが、植物病原菌類に特化したものは斬新ですね。第二弾、第三弾も楽しみにしております。
⇒ 新規性を認識しておられ、お目が高いです。おそらく、菌類グッズ蒐集のご趣味をお持ちなのでしょう。ご期待にお応えすべく、できれば第六弾まで作りたいです。
KW氏:菌類図鑑トランプ、その発想に感嘆しました。イラストも素敵ですね、細かくてキレイ、しかも楽しめて勉強になる!
⇒ 発想のきっかけは息子たちの手造り知育ゲームです(プロジェクトHeX 「菌ジャカ」を創作せよ! -菌類図鑑トランプの誕生-)。トランプサイズなのが良かったかもしれません。原画には結構荒いところもあり、正直なところお見せできません。
TK氏:「菌類図鑑トランプ」、驚きました!! 菌マニアには堪らないのではないかと思います。さすが佐藤さんですね! お送りいただいた菌類図鑑トランプの写真を、「NPO法人圃場診断システム推進機構 佐藤豊三氏原図」として、学生に紹介してもよろしいでしょうか?
⇒ 教育・普及目的で作ったトランプですから、これはストレートにうれしいです。授業でも休み時間や放課後でもご利用ください。
KW氏:ブログ更新メールで菌ジャカのことを知り、知り合い経由で絵柄を知り取説を読んで、なんと画期的なんだ!と重ねて感動いたしました。早く実物が見たいです。対戦も楽しいし、神経衰弱だったら自主トレもできるので2倍楽しめそうです。「菌ジャカ」もまさかのまさかでカードゲーム感が増し、なおかつ考えられたネーミング、菌により親しみが湧き実物を見るのが大変待ち遠しいです。妹が高校で友達と遊ぶんだと張り切っておりました。
⇒ 菌の専門家ではありませんが、元々虫がお好きな方です。同僚の方と妹さん用に3個も買って頂きました。それにしても妹さん、将来超有望です!
HI氏:学生時代、カビの線画に明け暮れていた私としては、手書きのカビのイラストがとにかく刺さりまくりでした。デフォルメされた有性胞子の絵柄も可愛らしく、全体的なカラーやデザインも素敵です。ブログも拝読させていただきました。菌ジャカ完成に至る経緯やそもそものきっかけを知るとより味わい深く感じられます。
⇒ 「とにかく刺さりまくり」まずは出血多量にお気を付けください(笑)。自分の持てるものをすべて注ぎ込んだ私としては、この総合評価は嬉しいです! 「デフォルメされた有性胞子」はダイヤ・クラブ・ハート・スペードの代わりにカードの上下についているマークですね。中でも多室担子器は一番苦労しました。
IS氏:すぐに出して学名を読んでいきました。The Genera of Hyphomycetesに載っているカビやいくつかの菌以外は何これ状態で読むのも難しく、これでは2人で対戦したとき絶対負けてしまう、勝つためには出てくる菌を実際に観察しなければ!と急に植物病原菌への意欲が湧いてきてしまいました。菌ジャカの目的はこれだったのかもしれないと思いました。
⇒ まさに術中にはまられた菌類愛好家の方です。自分で観察した菌の形と名前は忘れることはありません。1属でも多く見てドスコイっ、勝負師になってください!
GM氏:「菌ジャカ」、拝見いたしました。對馬先生からもご連絡をいただき、拝見してすぐに研究室内でも話題になったところです。掲載されている病原菌の中に、当県でも課題となっているダイズ茎疫病が含まれていたことに、親しみ、不思議と嬉しさを感じました。また、Pestalotiopsis属が含まれていたのも個人的には刺さっております。もともと馴染みが無かった菌でしたが、かつて築尾さんに実際の菌を見せてもらって教えていただいた際、分生子の形態のなんともいえない可愛らしさに衝撃を受けたことを思い出しました。こんなにも刺さるトランプを購入することで、NPOの活動に貢献できるということなので是非購入させて頂きたいと思います。
⇒ やはり、扱ったことのある、見たことのあるカビが入っていると入手されたくなるようです。実際、たくさん買って頂きました。築尾さんは花き病害図鑑で私も大変お世話になりました。
以上、特集でした。最後に筆者も一言。菌ジャカを作って一番良かったことは、これを口実として旧知の方々と連絡を取り合えたことです。お世話になった方々に実物をお送りし、あるいは、思い当たる方々に片っ端からご案内のメールを入れさせて頂いたところ、お礼や好意的な返信がたくさん寄せられ、幸福感に浸ることができました。菌ジャカを入手された方々もぜひコミュニケーションツールとしてご利用頂ければと思います。
ところで、前回の予告通り菌ジャカを絵札として各札の読み札を作り(図3)、かるたとしても使えるようにしました。先日開催された植物病理学会関東部会で初めて試作品のお披露目をしました。ご覧頂いた方々の反応は上々で、中にはすべての読み札に目を通された方もおられました。一方、すべて五七五の川柳調で作ったため、多くの札が言葉足らずで「難しい!」というご意見も頂きました。しかし、札の獲り合いに制限時間を設け、時間内に誰も獲れなかった場合は、後回しにして進行しても良いかと思います。難しい札は残りますが、何回も読み札を読めば絵札は徐々に減っていき、最後には全て獲れるはずです。従来のかるたのルールにとらわれず、柔軟に遊んで頂ければ幸いです。

図3.菌ジャカをかるたの絵札(左)として使用する場合の読み札(右)、両札は同じ順番で並んでいる.
トランプやカードとして遊んで頂く場合も、新たな遊び方を編み出して楽しんで頂ければと思っています。同封した「遊び方」に提案したような属名コール対戦の他に、例えば「長い属名は短い属名より強い」などのルールをプレイ仲間で決めておき、2人以上で札を出し合って勝負することもできるでしょう。その際、自分が出した札の属名を順番にコールすれば自然と頭に入ると思います。
*「菌ジャカ」のご購入、お問い合わせは圃場診断システム推進機構の「菌ジャカ」ウェブページからお願いいたします。